米一粒も大切にする平将門

平安中期、関東一円を手にした平将門は自らを新皇と名乗り、東国の独立を朝廷に示唆しました。

この頃、武士たちは朝廷につくか将門につくか決めかねていました。
伊吹山の大ムカデ退治で有名な藤原秀郷もその一人でした。

ある日のこと、秀郷は将門の家を訪ねました。直接会ってどちらにつくか決めようと考えたのです。

秀郷が来たというので将門はとても喜び、櫛を入れ始めた髪を結う暇もなく、あわてて出迎えました。

「ぜひ共に食事を」

と勧められ、秀郷は食事の席につきます。

そのとき、将門は米を一粒こぼしてしまいました。そしてそれをすかさず、拾って口に入れました。

それを見た秀郷は、乱れた髪で客を出迎え、落ちたものを平気で口にする将門を侮りました。
このような男に天下を治められるはずがないと考え、朝廷につくことに決めました。

しかし、将門のこの行動は全て人を想ってのことだったのです。
髪を結う間に客人を待たせては申し訳ない。
農民が作った大切な米を一粒たりとも粗末にするものではない。

外見にこだわる都の貴族になじんだ秀郷には、理解できないことだったのでしょう。

民のための国を作ろうとした将門は、朝敵とされ討たれた後も多くの人に慕われました。

そして、朝廷についた秀郷は、将門追討の恩賞は貰えましたが、歴史に多くの名は残りませんでした。

どちらが正しいかと問えることではないような気がします。
秀郷が考える、人に会うときは身なりを整え礼節をわきまえるというのも正しいことですし、将門の相手のことを思っての行動も間違っていません。
相手の立場や生活環境を思慮に入れることができれば、違った結果になっていたことでしょう。

スポンサーリンク